HP東善寺>小栗上野介>越屋根         横須賀造船所の越屋根風景               
 
 越屋根こしやね風景
       
フランス~横須賀造船所~富岡製糸場

  
 群馬県・長野県・埼玉県などかつて養蚕が盛んだった地域の農家に、越屋根(二重屋根)が残る風景が見られる。

フランスから持ち込まれた越屋根構造が横須賀造船所の錬鉄所屋根で鍛冶場の熱気を逃がすための越屋根になっていて、
・それが富岡製糸場の操糸場の屋根にも応用されて、繭を煮る蒸気の湿気を逃がす構造となっている。

 しかし、養蚕のための越屋根構造は明治以前から存在していた。
・ 田島弥平(群馬県伊勢崎市境島村)は蚕を健康に育てる「清涼育」法を唱えて、1863文久三年に蚕室の空気の流通を良くするため越屋根構造の養蚕室を建築している。

疑問 横須賀製鉄所錬鉄所の越屋根はフランス独自の構造か、もしかしたら日本の養蚕農家の屋根からヒントを得たか
   
 横須賀造船所 錬鉄所の越屋根
鍛冶場の鉄を加工する熱気を逃がすための越屋根 
 富岡製糸場 操糸場の越屋根
富岡製糸場は横須賀製鉄所(造船所)の建物をモデルとして、仏人建築担当技師たちがわずか50日ですべての設計図を書き上げた。
  日本にもあった越屋根風景  群馬県内  
 ちょっと注意しながら榛名山麓、赤城山麓を車で走ると、たくさんの元養蚕農家と思われる屋根に越屋根が載っている風景を見つけることができる。昭和40年代にナイロン製品が普及すると、手入れがいらず、虫に食われることもない、糸が丈夫なことなどから、次第にナイロン製品に押されて絹糸の需要が減り、養蚕農家が養蚕をやめ、桑畑は果樹林や野菜畑に変わっていった。
 だから現存する越屋根も、いずれ改築の際には余分な構造、として取り壊され、消えてゆく運命にある、といえよう。  
 
     国指定重要文化財 塩原家住宅 前橋市田口町

  現在も普通の居宅であって、突然訪問してあれこれの質問は失礼だから、とりあえず写真撮影だけに留める。母屋:木造三階建て 建築面積:434㎡ 1912大正元年の建築とされる  構造:一階は事務室や台所などの居住空間、二階が養蚕部屋、三階が蚕種作業の部屋  
   
 蚕種農家の越屋根 塩原家(前橋市)三階建ての上に大屋根、その上の越屋根が小さく見えるほど、豪壮な造りの大農家 国の重要文化財に指定されている。 塩原家 背後北側から見た外観も、周囲を圧する迫力がある 
   
 塩原家 大谷石の大きな倉庫にも越屋根がついている 蚕種の保存にでも使ったのだろうか。 塩原家の近所の家 やはり小型の越屋根が三つ。今は普通の居室となっているらしい
   
           田島弥平旧宅  群馬県伊勢崎市境島村
   
田島弥平旧宅 蚕種農家の弥平は「清涼育」法を唱えて、1863文久三年に越屋根の母屋を建てた。  ▲日本建築学会計画系論文集第75巻第648号2010年2月 より 
 
       その他の越屋根風景 (榛名山・赤城山の麓)
  
   
   
   
 

        新しい越屋根     前橋市(旧富士見村地区)

 前橋市富士見地区では、地域でなじみの風景となっていた越屋根を、新たに造る公共建物のデザインに取り入れ、採光・通風と内部の開放感を出している。

 越屋根がすっかり日本の農村風景に溶け込んでいた。養蚕農家がなくなり、改築されるときは消滅する運命にあった越屋根が、こうして現代建築に活かされて地域性を誇らしげに見せていることは、ローカルカラーを演出していて、懐かしい。
   
 農産物直売所 富士見村さわやかトイレ 
    
 商工会 見晴らしの湯 ふれあい館 

 


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