小栗上野介の提案森林林保護が大切                                          


小栗上野介の提唱
森林を保護育成すべし

幕末の蒸気船はほとんどの部材が木造であった。横須賀製鉄所の建設計画を実行に移した小栗上野介ら製鉄所委員は、本格的な造船が始まると日本の木材需要が広がるため森林の保護育成が必要として、慶応元年5月次のような提案を行った。

◇いま横須賀に製鉄所の建設を進めているが、まもなく完成すれば軍艦などがどんどん製造されることになる。そのとき必要なものが艦材である。
◇まず各官林で艦船製造に適応した木材を伐採し、また民間からも購入して囲い場を設けて貯蔵すること。伐採後すぐの生材を使用すると腐朽しやすいので必ず2,3年間囲い場で貯蔵して木脂を抜いてから使用すること。

幕末から明治初期の蒸気船はほとんどが木造だった。
(明治16年版『横須賀明細一覧図』より)
  
◇数百年の巨材を伐って2、30年で腐る艦材に使用すればいずれ国内の巨材が伐採し尽くされてしまうので、いまから森林保育の方策を採る必要がある。

◇過日横浜製鉄所首長ト・ロートルから出された意見書は、われらの見解と同じである。
◇わが国産出の巨材数種をト・ロートルに点検させ、その中で艦材に適していると見られるものは、ほかのフランス人造船士にも点検させて、フリゲート形、コルベット形、その他各種の軍艦に適応する曲直材の形状と寸法を書き出させ、その雛形に合わせて官林にあるのは伐り出し、民間にあるものは購入し、いまから艦材蒐集に着手することを勘定奉行へ通達すべきです。

◇官林はその奉行の所管なので、奉行に苗木植え継ぎから培養保育まですべて規則を設けて実行させ、その方法が軌道に乗ってきたら、これを各藩および民間所有の森林に波及させ、さらにそうして出来た良材は政府が購入するものと確定して国内へ通達すべきである。
森林保護の提案をした小栗上野介と栗本瀬兵衛の胸像が並ぶ、横須賀市文化会館前庭
◇そして役人を派遣して森林保育のことを勧奨すれば、海国である日本にとって必要な多数の軍艦を製造することに、永く艦材不足の憂いはなくなるでしょう。
製鉄所委員  小栗上野介 山口駿河守 柴田日向守
          木下大内記 石野筑前守 栗本瀬兵衛 
          増田作衛門 浅野伊賀守

            (『海軍歴史−12』より
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