東善寺 法話          始まりは親を選べなかったこと


 思い通りにならない人生
始まりは―親を選べなかった
ことから

 「オレは悟(さと)ったよ、みんなムダな抵抗(ていこう)だったと―」
 「へーえ、それで」
 「養毛剤(ようもうざい)なんていくらつけても、無駄(むだ)な抵抗だった。毎朝(まいあさ)ていねいに擦(す)り付けるのが日課(にっか)だったが、結局(けっきょく)何にもならなかった。値段(ねだん)で効き目が違うものじゃない。やめたらすっかり気が楽になった」
 「それで」
 「いつだったかの法事(ほうじ)で和尚(おしょう)さんから、この世はいつも変化していていいことも悪いことも同じことは続かない。それを【諸行無常しょぎょうむじょう】とお釈迦様(おしゃかさま)が説(と)いている。その移り変わりは生まれた時から始まっていて少しずつだとすぐには気が付かないこともある、という話を聞いてわかった。オレの頭のことを言ってるとー」
 「アハハ、私はそんなつもりで話したわけじゃないけどねえ」

 髪の毛の変化(へんか)ならまだ軽(かる)い。
  生きていると変化の流れの中で苦しいこと、辛(つら)いこと、困(こま)ったことがたくさん目の前に起こる。他人に腹が立つこともある。おかしなことに、自分に腹が立つ時もある。追いつめられた気持ちに陥(おちい)ることだって起きる。

 みんな「思い通りにならない」からだ。
 
 
ダンコウバイ・檀黄梅 寒さに耐えて春早くに咲く
 
 たしかに 思い通りにならないことは苦(くる)しい。
 でもその苦しさはいつ始まったかと根源(こんげん)をたどると、この世に生まれた時親を選(えら)べなかったことから始まっている。―よくも、悪くも―。 
 誕生日も、男がいい、女がいいも思い通りに選べなかったし、だいいち生まれること自体(じたい)を選べなかった。気がついたら命を頂(いただ)いていた。 

 これを一つ肚(はら)に据(す)えておくと、あとが楽になる。
 その後の人生で思い通りにならないことが目の前に迫(せま)っても、これは生まれた時から始まっている、と考えれば慌(あわ)てたり、うろたえたりしないですむ。想定内(そうていない)だから。
 
 さあ、元気を出そう。いつかよくなる。
                                                     (2016平成28年春)

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