HP東善寺・山だより     ●               浅間隠山(矢筈山・川浦富士)の保護


■浅間隠(あさまかくし)山は倉渕村・吾妻町・長野原町にまたがる名山。浅間高原を見下ろす独立峰で、頂上は森林限界を抜けた草地のため展望がよく、関東平野からよく見える秀麗な山として知られてきました。

■近ごろ浅間隠山に登る人が急激に増え、私が高校生の頃は日曜日に登山者4,5人という山が、いまはツアー会社がバスで団体を連れてくる山に変貌し、道路わきの駐車スペースがあふれるほどとなりました。
浅間隠山
裾を引いた姿が美しい。別名「矢筈山(やはずやま)」「川浦富士」
左の噴煙が浅間山
・倉渕村権田字亀沢から撮影

登る人が増えるにつれて山頂や登山道に問題が生じてきた。
 
 昔(昭和40年代まで)は草地に細い踏み跡が一本あるだけの山頂だった。二度上峠への道路は途中まで工事中で未開通、銅青沢をつめて登った。
 
 近年(昭和50年代後半)、権田―二度上峠―北軽井沢の道路が舗装され、登山者が増えると休憩で草地に踏みこむ人で草が生えなくなって→裸地化し、
  ・雨水の浸食で表土が流され、頂上の三角点標石が30センチ以上も根元が浮いて、今にも倒れそう

 さらに草地での休憩を求めて傾斜した浅間高原側まで入り込む人がふえ
  ・裸地が南斜面(浅間高原側)に広がり始めた  

 このまま推移すると雨による侵食が南斜面の土砂を流し、ヤマツツジの根元がえぐられて倒れ、数十年で山頂崩壊につながることは間違いない。

たとえば、……
  ・近くの鼻曲(はなまがり)山山頂の裸地化が進んで、一部(霧積温泉への下り道)に崩壊がみられる、
  ・赤城山の地蔵岳山頂のガラガラ面、
  ・赤城山長七郎岳山頂の小沼側斜面がえぐられてひどいガラガラの斜面、
やはり草の踏みつけ→裸地化→侵食、によるもの。あの山は元はきれいなお花畑だったのです。

◆どこの山に登ってもご注意を
休む時は裸地で休む=草地に腰を下ろさない
  ロープの外にはみ出ないようご協力ください。

山頂手前で休む場合も、草地に入らないようにお願いします。
 裸地で休むためのシートイスを用意する。
 
迂回するジグザグ道を歩いてください。
 
 直登降の近道は避けてください。ジグザグ道をカットする近道(直登降の道)は、踏みつけー裸地化ー雨水による侵食(雨裂)でえぐられ、山肌が痛みます。山のお肌も大切に

*木の幹にペンキで「強者―近道」などと書く変なボランティアがいて、困っています。
 
保護作業
■山頂を行政区域とする吾妻町に働きかけ、平成14年10月10日吾妻山岳会のメンバーと共に、とりあえず山頂にクイを打ってロープを張り、踏みつけられる範囲を狭めました。

ロープ張り作業
これから趣旨の看板を作って建てます

埋めてあったゴミ
かつて山頂に埋められた空き缶を見つけ、掘り出して下げました。
 

 18年後は…  
2020令和2年5月28日
 
▲エンレイソウ
   
▲烏川水源の山々 
三角点標石 ますます浮いて、触るとグラグラ。
 オヤ、右下の画像で比較すると、ついに一度倒れたものを誰かが展望盤の傍に寄せて建て直したらしい。
 
16年後の山頂は・・・ 2018平成30年6月9日と14日 です
     
 ▲山頂 ロープも残り、そこから外は草地が復活   ▲ここ50年間で山頂の土砂流出40a 三角点の白い標石が今にも倒れそう
     
     新しい看板設置  
                2018平成30年6月14日

「ジグザグ道を歩いてください」
・直登降の近道は雨水でえぐられ山肌が荒れます。
・山のお肌大切に−

   「も」にすればよかった…
・3箇所にセットした(登山口、銅青沢のツメ鞍部、東の頂上)  製作:sign104 にお願いした
 ▲スプリング 木の成長は早い。途中にスプリングを入れ木肌への紐の食い込みを防ぐ、
     
近道ふさぎ とりあえず枯枝を集めて近道の入口、出口をふさいでおく。  以前にふさいだ笹原も、また誰かが踏み込んで近道が復活し始めていた。
     
 ▲赤テープ たくさんの赤テープ、自然の中では人工物は全てゴミ。ヤブこぎのコースではないから、テープは不要。団体登山などで付けたらラストがはずしてほしい。  ▲おや、これはタテ結び。この人は時々靴紐がほどけているだろう。
     
 ▲標識用テープ 境界調査の杭の位置を示すからこれは外さない  ▲赤テープのゴミ 団体登山用につけたら、ラストが回収する役目としてすぐ撤去してほしい。ゴミのない山、自然を堪能できる山がいい。ほんとうは看板もいずれゴミになるから、つけたくない。


  
  浅間隠山 初夏の花々    3年後です                2005平成17年6月17日です
     
浅間隠山の6月は花盛り 登り初めの落葉松林にたくさんのヤマツツジが咲きます ハルゼミの抜け殻
山一面、ハルゼミの声
     
 グミの木が多く、夏の終わりには食べられます  サラサドウダン  頂上を北側に下ったところにはドエライ大木が  サラサドウダンの巨木群  日当りのいい草原にマイヅルソウも咲いている
     
近年登る人が増えて、道もだいぶ整備された でも、団体の目印につけたテープは用が済んだら外したほうがいい。山の中でゴミとは人工物のことだから。 頂上はヤマツツジ
     
トウゴクミツバツツジ レンゲツツジの競演です レンゲツツジのつぼみの色合いはスゴイと思う
 
 
   浅間隠山 初夏の花々−2    3年後です       2005平成17年7月13日です
     
7月はアヤメが山頂に咲く 近道をしないで下さい。直登降の道は雨水がえぐってミゾになり、山肌が荒れます。・・・・・・」
お願いのプレートを取り付けました
オダマキ
草の中にはクリーム色のオダマキがたくさん見られる。
     
 シモツケ
途中の道路わきにも咲いていた。山頂までたくさん見られる。
 ヒヨドリソウ
アサギマダラ(蝶)がこの花やフジバカマによくついて、蜜を吸います。
 「草地に入らないで下さい。草地の踏みつけ→裸地化→土砂の流出→山頂の崩壊が始まっています。・・・・・・」
 
  2年後の山頂は・・・  2004平成16年10月1日です

ロープの外側は草が生え始まっていて、効果がありました 9月1日以来の噴火は…
今日は少し煙が高いくらい
八ヶ岳もはっきり見えてすばらしい無風快晴
 
 
 
 草津白根山が異様に白く見え、上空に浅間山からの噴煙がたなびく   背後は横手山  鼻曲山を中心とした烏川源流一帯の緑もきれい  以前、皇太子結婚の日(休日になった)につけた看板も効果があった(近道が笹原に復原した)ので、別の場所に移動して付け直す



湯ノ丸山の右手に北アルプス鹿島槍〜五竜・唐松岳の稜線が見える リンドウ
山頂の草むらに一本咲いていた
おかしな標識 「第3地点」
新たに登山道数ケ所に書かれていた。勝手な地名をつけるのはいかがなものか。


おかしな標識 「出口」
迷路遊びではあるまいし、〈出口〉とは・・・。登山道にやたらに書いてあって目ざわり 不自然
おかしな標識 「センターライン」
極めつけはこれ。登山道に〈センターライン〉とは
下ってくる友人とばったり
「ヤア、清水君!」
「ヤア、あんまりきれいに晴れたので、畑の草刈りをやめて、いま登ってきた…」とか。

「裸地化」の関連ページ
裸地化:「森林と公益機能」(リンク)/「栗駒山の裸地化」(リンク)/「若草山の裸地化」(リンク)/「スキー場の裸地化」(リンク)/「オオバコは裸地化を防ぐ代償植生」(リンク)/「登山道荒廃の研究」(リンク)/「尾瀬のオーバーユース」(リンク)/「雨の日のクリーン登山は裸地化の元」(リンク)