小栗まつり随想漕ぎ手が客になってはいけない

小栗まつり随想
漕ぎ手が客になってはいけない

□ 平成9年から連続して行なってきた小栗まつりは、ことしで9回目を実施できた。9回のうち小栗上野介顕彰会がかかわったのは4回目ということになる(村民体育館で式典を行なうのはこれで3回目)。

□ 式典の会場となった村民体育館の受付へ着くと、係がちらっと机の上の表を見て、「住職の席は決めてないですから、空いているところへどうぞ」と昨年と同じことをいわれ、少し前のほうが空いていたので、座る。あと5分くらいで開式だ。帽子が置いてあった隣の席に戻ってきたのは、伊勢崎市から来たM氏だった。挨拶を交わしていると、「方丈さん、そこは私の席ですよ。でも、いいですから私はこちらに座りますから」という声がかかった。よく知っている村の人である。「はあ?そうですか。それはすみませんでした。」立ち上がってイスを見直したがそれらしい名札は貼ってない。「方丈さんの席は別にあるのじゃないですか」「いいえ、受付で空いてる席にどうぞ、といわれたのでここに座ったのですが・・・」「そうですか・・・。この席に誰もこなければ、私はここでいいですから」と不審そうな様子。はなはだ居心地(いごこち)の悪い席に座ることになった。

□ さてこれはどういうことだろうと考えた。村民の中でも指定席を設けて案内される人と、そうでない人がいるらしい。もし私以外の、村外や県外からおいでの一般客がこういう場面に出くわして、席を移動させられたとしたら「こんなことをされるのなら、二度と来るものか」と思うに違いない。今まで気づかなかったのが、うかつだった。

□ 私の席だ、と言った人は村でも知られた方で、私と同じく小栗上野介顕彰会の理事である。小栗まつりは顕彰会の主催であるから、理事は船の漕(こ)ぎ手であらねばならない。小栗まつり全体がうまく運営されるよう裏方で動いて、時にはテント張りや受付、案内係、駐車場の旗振りもいとわない心がけが必要となる(もちろん私に声をかけたような高齢の理事には、そこまでさせない配慮も必要だが)。

□ 地元の主催者側の理事が指定席に案内されて前方の席に座り込み、わざわざ来てくれた村外や遠い県外からのお客が後ろのほうに遠慮して小さくなっているのでは、本末転倒のこっけいな式典となる。船の漕(こ)ぎ手が客になってはいけない。

□ これから提案しようと思う。今後は、
1、指定席はロープを張るなり、それらしいシールをつけて、はっきりわかるようにする。
2、小栗上野介顕彰会役員は会長以外は指定席を設けない。
・・・・・・と。
                        (2005・平成17年5月 住職 村上泰賢)

*お断り:この文章は「受付の手落だ」と責めるものではなく、顕彰会役員は受付職員に余計な気遣い・負担をさせないことが大切と考えたものです。