東善寺HP 住職のコラム●● 門牌(もんぱい) + ゴザ |
門牌(もんぱい)は 布施のシンボル |
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「方丈さん、門牌を立てるのはどんな意味があるのですか・・・」 ある家のお葬式の後でたずねられました。 亡(な)くなった方の戒名(かいみょう)を書いた立て札「門牌」を、どうして家の中でもお墓でもない、自宅の門口(かどぐち)に表に向けて立てるのか、不思議に思ったのでしょう。 ◆門牌の意味は「亡くなった方の供養として布施をします。どうぞお寄り下さい。」と伝える立札です。 昔は「何か食べ物でもお金でもいいですから、恵(めぐ)んでください・・・」という「おもらいさん」がよく村や町を廻(まわ)ってきました。門牌の前で手を合わせて拝(おが)めば、必ず何がしかのお金や食べ物をいただけるということで、心細い旅を続けるおもらいさんにとっては、大変ありがたい立札だったわけです ◆あるときテレビに大相撲の曙関(あけぼのぜき)が映(うつ)っていました。新弟子のころたいへん世話になった兄弟子が亡くなったので、新潟(にいがた)までたずねてお線香をあげる場面でした。 曙関が入ってゆくその家の門口にも、やはり門牌が立っていました。
◆近ごろはおもらいさんを見かけることがなくなったから、門牌は立てなくもいいのでは、という声を聞きます。でも私は、お釈迦(しゃか)様の説(と)く「布施の心」を表すシンボルとして、仏教徒であれば門牌を立てることをおすすめしています。 ◆新聞にこんな投書が載(の)っていました。 「私は、駅前の立ち食いソバを食べていた。そこへ荷物を両手に下げた老人がやってきて、花屋はどこでしょう、と聞いた。店は混(こ)んでいて、店員さんは返事を出来ない。 私も聞こえないふりをして、ソバを食べていた。すると、隣(となり)で食べていた若者が『あ、花屋ならこっちだよ』と、食べかけのどんぶりを置いて荷物まで持ってやり、案内していった。 まもなく若者が戻(もど)ってきて食べかけのハシをとると『温(あたた)かいのと代(か)えるよ』と、店員のおばちゃんが新しいソバを出してくれた。若者とおばちゃんと、二人の心が感じられて、暖かい気持ちで店を出てきた。聞こえないふりをしていた自分が恥ずかしかったけれど、・・・・」 という話。 その若者は茶髪だったそうで、それまでは、あんな髪の色で・・・・、と嫌(きら)って見ていたが、みかけで人を判断してはいけない、見直しました、とも書いていました。 ◆誰でもどこでも出来る布施を、見かえりを求めずさりげなく行うことが大切だ、とお釈迦様は説いています。お葬式の後に故人の冥福(めいふく)を祈(いの)って立てる門牌は布施のシンボルだし、若者と店員さんの行動はまさに布施を行なっている姿、といえるでしょう。 (1999平成11年二月・東善寺だより85号) |
なんと!おもらいさんに座ってもらう ゴザを作る地区があった ▲門牌の下に敷かれたゴザ |
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おもらいさんのゴザ 陣田地区のN家の葬儀で「告げ」に来た喪主と打ち合わせしていると、「門牌の下に敷いて、おもらいさんに座ってもらうゴザを隣組が編む」という話が出た。 えッ!そういうものがあったの!? それは貴重な話だ!ということで、澤太郎さんが「こうやるんだっけな」と言いながら、ワラを編んでゆく作業風景を撮影し送ってもらった。 本来は左縄をなって作るという。 *左縄…ナワをなう時、左手を押し出すないかた。左巻きの逆ナワが出来る。葬儀は日常のことではないから左ナワを使う。 |
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【撮影:長壁栄子さん】 門牌の下に敷かれたゴザの画像を見ると、そういえば住職もこの様子を見た記憶があるけれど、意味を知らずにぼんやり見ていたことになる。 なんとも恥ずかしい。 来日した外国人が「日本人は優しい」という原点にこのような細やかな心遣いがあるのでしょう。寺の大黒が、「涙がでる話!」と感激していた。 大事な風習 自宅葬が消えて斎場での葬儀が普通になると、それまで隣組が作っていた料理も、様々な葬儀の飾り物も使われなくなり、作られなくなった。東善寺ではせめてお釈迦様の教えの根本を伝える門牌は残した方がいいと残したが、もし門牌もいらないとやめていたら、きっとこのゴザも置くところがないから消滅していたことだろう。 過疎化が進み兼業農家が増える中で隣組の仕事も負担が大変、と共同作業がどんどん減っている昨今だが、せめてワラがあるうちはお釈迦様の心を伝える大事な風習として伝えてほしいものです。 (2017平成29年9月・東善寺だより) |
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寺送りのお米 門牌とは関係ないけれど… 陣田・亀澤地区ではこのほかに葬儀の後の「寺送り・寺参り」でご本尊にお供えする米の袋も特別に作る。真っ白いサラシ布の両端をそれぞれ三角に折り、お米をいっぱいに詰めて縫う。大きな白いニンジンがサラシの両端につながったような形になる。 真ん中が30〜50aあるから振り分け荷物のようにして、亡くなった人の肩に掛けるスタイルと見える。これも貴重な風習です。 (2017平成29年6月) |
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