住職のコラム●●みづのたたへの |
みづのたたへの 詩:高橋元吉 |
みづのたたへのふかければ おもてにさわぐなみもなし ひともなげきのふかければ いよよおもてのしずかなる |
詩の意味 水が深いほど、その表面に波は立たない。 人もその心の嘆(なげ)きが深い人ほど、 表(おもて)に出さなくなる。 【詩の作者】高橋元吉は、前橋の書店主ですが、書店経営とともに詩作に情熱を注(そそ)いで、求道(ぐどう)的な作品を発表しました。 |
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人が生きている間に、どうして自分だけこんなつらい目に会うのか、という思いをすることがある。生まれてこなければよかった、とさえ思う。 この詩は、悲しみの深い人ほど、そのたびに口に出さないものです。つらいことも、悲しいことも、思い通りにならないことも、耐(た)えてゆくしかない。いちいち口に出すと、耐える力がなくなります、とうたっています。 良寛(りょうかん)さんも、漢詩(かんし)で 君見ずや双眼(そうがん)の色 語らざれば憂(うれ)いなきに似たり (あなたは、あの人の眼をよく見ませんか。口では何もいわないから、なんの悲しみもないように見えますが、あの眼に、深い悲しみが見えませんか。) と、詠(よ)んでいます。 (東善寺だより67号・1996平成8年8月) |