住職のコラム● ●彼岸へ渡る舟 |
彼岸(ひがん)へ渡る舟 |
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「秋分の日」をはさんで7日間が秋の彼岸です。「彼岸」という言葉はインドで「パーラミッタ」といい、漢字で「波羅蜜多」と書きます。この漢字は、発音を示す当て字で意味はありません。 パーラミッタの意味は「到彼岸・とうひがん」、 つまり向こう岸に渡ろう、 ということ。これがつまってお彼岸というのです。 わたしたちがいま住んでいるこちら側の岸(此岸・しがん)は、争いごとや苦しみの絶えない、迷いの世界です。川の向こう岸・彼岸・は仏さまの住んでおられる、清らかで澄みきった悟りの世界。この彼岸へ渡るには、ひどく流れの速い広くて大きな川を渡るため、そうとうの努力(どりょく)をしなければなりません。 お釈迦(しゃか)さまは、この川を渡るために6つの舟を用意しました。
第1は、布施(ふせ)の舟。 この舟には、誰にでも親切(しんせつ)にして、困っている人を助けたり、生き物を大切にする人しか乗れません。 第2は、持戒(じかい・きまりをまもる)の舟。 この船には、自分勝手な人や、乱暴(らんぼう)な人は乗れません。よいことはすすんで行(おこな)い、悪いことをしない人だけが乗れます。 第3は、忍辱(にんにく・がまんする)の舟。 この舟には、どんなに頭に来てカッとすることがあっても、またつらいことや苦しいことがあがっても、がまんすることができる人だけ乗れます。 第四は、精進(しょうじん)の舟。 この舟には、自分の仕事や勉強にはげむ人だけ乗れます。 第五は、禅定(ぜんじょう)の舟。 坐禅(ざぜん)をする人だけが乗れます。 第六は、智恵(ちえ)の舟。 一心に仏さまを拝(おが)み、悪い心が起こらないように努力する人だけが乗れる舟です。 あなたはどの舟に乗れますか。 この6つの舟のどれか一つにでも乗れるように心がけるのが、お彼岸の大切な意味です。 (1988・昭和63年9月・東善寺だより) |