住職のコラム ● 花の咲かない寒い日
 

 
花の咲かない寒い日は
 
花の咲かない寒い日は
しっかり深く
根を下ろせ
 

  
昨年は戦後最悪の凶作(きょうさく)だということで、米が値上がりする、外国から米を緊急輸入(きんきゅうゆにゅう)する、といったニュースがしきりに伝えられた。ところがある夜遅く、テレビに東北のある町の田んぼが映し出された。
いぼ石の田んぼ
・田んぼの真中に大きな 石が坐りこんでいます。    
  (寺の川向こう)

 その田んぼはすぐ隣
(とな)りの田んぼとくらべてもはっきり違(ちが)っていて、平年どおりに実(みの)っていて、町の人たちや県外から聞きつけた人が見学に来ている。その田んぼの持ち主がアナウンサーに、こんな年でも平年と変わらずに実らせることが出来たわけを話している。その話がまことに印象的(いんしょうてき)だった。

 「まず、植えたすぐあとは肥料をやらないようにする。すると稲はあちこちにしっかり根を張って養分をとり入れようとする。十分に根を張ったところで、肥料をやると根張
(ねば)りのしっかりしたいい稲が育ち、ちょっとした冷害(れいがい)にも耐(た)える力を発揮(はっき)する。」

 「水をやるのも、暑
(あつ)い気候の時は朝早く冷たい水を入れてやる。今年のように冷たい夏は午後近くのあたたまった水を入れてやる。」のだそうだ。最後に「けっきょく稲も家族と一緒ですよ。手をかけすぎてもだめだし、必要なときは愛情をもって世話(せわ)する」と笑った言葉が耳に残った。

 米づくりの実際になれば、もっともっと苦労があることだろう。私がこの話で印象深かったのは、人間も同じことだろう、ということば。

 「勉強しなくて困るんです。」「学校へ行かないで困ります。」「家のものと話したがらないんです・・・」こういった相談で行ってみると、子供は自分の部屋があってテレビ、ラジカセ、ビデオ、ファミコン(テレビゲーム)、コタツ、・・・とあらゆる電気製品に囲
(かこ)まれ、すごいのは電話やクーラーまで備(そな)わっている。

 こんないい部屋では誰だって部屋から出て学校へ行くなどいやになる。苦労しなくても、ほしいものはもうほとんど手に入れたのだから、なんでこの上学校に行って苦労しなくちゃならないんだ、と思うのがあたりまえ。

 電気製品はそろっていても、かんじんの気持ちが家族や親とつながっていないから、学校へゆくはりあい、勉強するはりあい、学校であったことを話すはりあい、聞いてもらえるはりあい、が失われていて『物はあっても、心がない』状況
(じょうきょう)におかれている。

 あまり若いうちに肥料
(ひりょう)をやりすぎないこと、これは子育(こそだ)てにもあてはまるようだ。

                       (1994・平成6年1月・東善寺だより)