住職のコラム● ● 盆踊りはみ魂迎え |
盆踊りはみ魂(たま)迎え |
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盆はうれしや 別れた人も はれてこの世に 会いに来る 夏になるとあちこちで盆踊りが行なわれます。 学校の校庭に組んだヤグラを囲(かこ)んで、お母さん、お姉さんたちが輪になって踊り、久しぶりの帰省(きせい)でいくらか興奮(こうふん)ぎみの若者たちが、なつかしい友の顔を見つけ声をかけあう姿がみられます。 もともと盆踊りは、先祖の精霊供養として始まったものといわれ、大事な宗教行事だったのです。 金鳥の蚊取り器のテレビコマーシャルに、小柳ルミ子が頭に金銀の灯篭をのせて踊る姿が出てきますが、あれはまさに先祖の霊を灯篭で迎え、灯りで慰(なぐさ)める本来の盆踊りの姿で、じっさいに熊本県山鹿市で行なわれている「山鹿灯篭まつり」と呼ばれるものです。
わが村の盆踊りは、東善寺と権田青年団の協力で戦後始まったもので、戦後ようやく人心が落ち着いてきた村人に喜ばれ、今に続いているものです。この三月に当寺のお施餓鬼でお説教をしてくれた都筑賢鳳師がまだ大学を出たてで、寺の庭で指導してくれた姿が目に浮かびます。 たかが盆踊りといっても、古くさい踊りはやめてゴーゴーダンス大会にしてしまえ、という話にならないのは、ただの民謡踊り大会ではなく大事な先祖供養の意味がこめられているからでしょう。 お盆には東京などへ働(はたら)きに出ている家族が、弟が、妹が、姉が、なつかしいふるさとの味を求めて帰ってきます。ふるさとを持たない都会の人もたくさん訪れます。 今生きているものどうしが心を休めることはもちろん大切なことですが、忘れてならないことはお盆もお正月もみな、もともとは「先祖の精霊を迎え慰(なぐさ)める」ためのまつり、そのための休日であるということ。 「お盆で客が来てて、寺参りも墓参りもできねえ」といいわけする人は、まずその客を誘(さそ)って寺参りや先祖迎えをするように、気持ちややり方を変えましょう。 (1986・昭和62年8月・東善寺だより) |